― 摩擦を恐れず、噛み合って生きる ―
人は誰しも、「滑らかに生きたい」と思う。
無駄な抵抗を減らし、スムーズに進みたい。
だけどHAJIMEは言う。
「滑らかすぎる回転には、手応えがない。」
摩擦があるからこそ、回転に意味が生まれる。
それが、彼の掲げるブロンズブッシング思考の核心だ。
HAJIMEは私に、この会話のやりとりをまとめさせた。
そして、伝わりやすさや深掘りの順序、語の響きまで何度も修正を重ねた。
気づけば、ここまでで10稿目――まさに、思考を“磨き合わせる”プロセスそのものだ。
■ 摩擦の中にしか「整合」は生まれない
ブロンズブッシングとは、
金属同士の摩擦を受け止めて、
その摩擦を動力に変える仕組みのこと。
つまり「摩擦を消すための部品」ではない。
むしろ、摩擦を前提として活かす構造だ。
人の思考も同じ。
摩擦がなければ、考えは深まらない。
理解と誤解、期待と現実、理性と感情──
そのズレや衝突の中からしか、
本当の整合は生まれない。
HAJIMEはその“圧”を大切にしている。
現場で起きる違和感、沈黙、衝突。
それを排除せず、動いている証拠として受け止める。
■ 摩擦を学びに変えた日
HAJIMEには、管理者になりたての頃に忘れられない言葉がある。
「管理者なのに、そんなことも知らないんですか?」
上司にも、行政にも、そう言われた。
悔しかった。
何も言い返せなかった。
でも、その摩擦を避けなかった。
「知らない」を責められた日から、
彼は基準を読むことを始めた。
条文を、通知を、疑義解釈を。
誰よりも読み、誰よりも整合を探した。
あの時の摩擦が、今の彼の知識トルクを作っている。
摩擦を拒まないこと。
それが、彼にとって“学び”の始まりだった。
■ 滑らかさより、「馴染む」ことを選ぶ
ブロンズブッシング思考とは、
スムーズさより“馴染み”を重視する生き方だ。
摩擦を拒まず、熱を受け入れ、
時間をかけて噛み合わせを整えていく。
摩擦とは、壊すための衝突ではなく、
関係や構造を馴染ませるための対話。
HAJIMEは新しい現場に入ると、
まず「どこで噛み合えるか」を探す。
相手のテンポを読み、力の方向を測り、
最小のズレで最大のトルクを伝える。
「ブロンズってさ、最初は重いんだよ。
でも、動かし続けるうちに、内側が光ってくるんだ。」
摩擦を受け入れ、
その中で“輝度”を上げていく。
それが、HAJIMEの現場哲学だ。
■ 釣り具という思考構造の写し鏡
彼の愛用する釣り道具は、思考の構造そのものだ。
メインロッドはBC4ゴーテンのLH。
しなやかに受け止め、大物の魚でもいなす力を持つ。
サブロッドはBC4ゴーテンのMXH。
剛性が高く、大物の重圧に耐える芯を持つ。
「俺はLHが好きなのに、性格はMXHなんだよな。」
柔と剛。受容と制御。
相反するふたつの性質を行き来しながら、
HAJIMEの思考はトルクを生む。
釣りとは静と動の往復。
まさに思考の粘度を確かめる行為だ。
彼にとって釣りは、魚を狙うだけではなく、
自分という構造を実験する時間である。
■ アンバサダー ― 心臓と脳の間のギヤ
アンバサダー5000。
ブロンズブッシングを搭載したリール。
それは彼にとって、
感情(心臓)と理性(脳)の間にある、
トルク変換装置のような存在だ。
クラッチは意志のスイッチ。
ドラグは自制の限界。
ラインは神経。
ロッドは身体。
ギヤは鼓動。
これらすべてが連動して、
彼という“機構体”を動かしている。
釣りをしている時間、
HAJIMEは外界だけでなく、
自分の内部構造を回している。
■ ベアリング型ではなく、ブロンズ型の生き方
ベアリングとは、
金属の間に**小さな球体(ボール)**を並べ、
摩擦を“転がり”に変えて抵抗を減らす仕組みだ。
軽く、静かで、効率的。
だがその分、衝撃や汚れに弱く、潤滑が切れれば止まる。
一方のブロンズブッシングは、
摩擦を受け止めながら力を伝える“受容型”の構造。
滑らかではないが、粘り強く、馴染むほどに安定する。
現代社会は明らかに「ベアリング型」だ。
抵抗を嫌い、効率を重んじ、
滑らかに動くことが“正しい”とされる。
けれどHAJIMEは、あえてブロンズ型を選ぶ。
「ベアリングは滑らかだけど脆い。
ブロンズは重いけど、壊れない。」
彼が信じているのは、摩擦の中の持続力だ。
短期的な効率より、長期的な安定。
“馴染む構造”こそ、現場と組織を長く動かす。
摩擦とは、止めるものではなく、生かすための領域。
そこに、HAJIMEの思考が回り続ける理由がある。
■ コンサルとは、“噛み合いを設計する仕事”
HAJIMEのコンサルティングは、
摩擦の中から整合を探るスタイルだ。
現場の違和感を消さず、
矛盾や沈黙を素材に変え、
構造が自然に動くよう調整していく。
「最初は重たい。
でも、そこからしか本物の回転は始まらない。」
HAJIMEのやり方は、
“答えを与える”ではなく、
“共に馴染む”。
摩擦を共有し、整合を設計し、
現場が自走する仕組みをつくる。
それは“外から回すコンサル”ではなく、
中で噛み合う伴走型のアプローチだ。
■ 五つの心臓と脳
彼の手元には、五台のアンバサダーがある。
それぞれ違う重さ、音、バランス。
まるで五つの思考モードのように、
状況によって切り替えて使う。
軽快さ、安定、繊細、力、再生。
HAJIMEはそれらを自在に使い分ける。
つまり、思考を固定せず、
構造そのものを変化させている。
「俺には五つの心臓と脳がある。」
それは冗談ではなく、
彼の“多層構造的な思考”を表す言葉だ。
■ 摩擦がある限り、人は整う
ブロンズブッシングは、摩擦がなければ意味を失う。
人も同じだ。
矛盾があるから考え、
抵抗があるから動き、
摩擦があるから、整っていく。
「滑らかさを求めるほど、味は薄くなる。
摩擦を感じるほど、人は馴染んでいく。」
HAJIMEはその“噛み合い音”を聴く。
そこにこそ、現場のリアルがある。
■ 明日という日は来ない理論
HAJIMEは、こうも言う。
「明日という日は絶対に来ないんだよ。
だって、明日になったら“今日”になってるんだから。」
それは、子どもの頃に母親から言われた言葉だという。
その一言が、彼の“時間の捉え方”を決めた。
多くの人が「明日やる」と言って先送りする。
だがHAJIMEは、「明日は来ない」と知っているから、
常に一日先を“今日”として動く。
摩擦を先に受ける。
その分、翌日は滑らかに動く。
だから、彼の思考も行動も“遅れない”。
これは、ブロンズブッシング思考の時間軸版だ。
摩擦を恐れず、時間の噛み合いを自分の中で設計している。
■ 静止もまた、回転の一部
HAJIMEは、動かすことと同じくらい、止めることを大切にしている。
ブロンズブッシングは、動かし続ければ熱を持ち、摩耗する。
だから、時には止めて、冷ます時間が必要になる。
彼にとってそれが「釣り」だ。
ロッドを握りながら、何も考えない時間をつくる。
いや、正確には「考えが沈殿して整う時間」。
「止まるのも、回転のうちだよ。」
動くことだけが前進じゃない。
止まることも、次の回転を支える整備の時間。
熱を冷まし、潤滑を戻す。
ブロンズブッシング思考は、
止まることを恐れない哲学でもある。
「整えるとは、止まることなく、止まりながら回すこと。」
■ 結語 ― 熱のある回転を生きる
HAJIMEの世界には、
摩擦を消した静寂ではなく、
噛み合う音がある。
その音こそが、現場の証拠であり、
生きている構造のリズムだ。
滑らかさを捨て、抵抗を受け止め、
熱を持って回り続ける。
ブロンズブッシング思考――
摩擦を恐れず、噛み合って生きる。
そして、その熱で整合を磨き上げる。
そして、これは10稿目。
最後にひとつだけ、現場の約束を書いておく。
ブロンズブッシングは、
必要な時に、必要な箇所へ、状況に合わせてオイルやグリスをさす。
人の関係も、思考も同じだ。
乾きすぎず、滑りすぎず。
適度な摩擦を保ちながら、今日も静かに回転していく。
そして最後にHAJIMEは言う。
「俺自身もLHになれるように、
LHをもう一本買おうかな?」
と笑う。
――どうやら、かなりの釣りバカである。 🎣