今回はHAJIMEさんにこれまでの人生についてお話を伺い、その言葉を整理して記事にまとめました。
小学5年生のときに経験した仲間外れから始まり、大学中退、母の死、シングルファーザーとしての育児、経営者としての孤独、そして現在のコンサル業へ。
そのすべてが一本の道としてつながっていることが見えてきました。
仲間外れが教えてくれた「考えること」
小学5年生の頃、HAJIMEさんは仲間外れを経験しました。
きっかけは、仲間外れにされていた友達と一緒に下校したこと。翌日から今度は自分が仲間外れに。以来、ずっとその状態が続いたと振り返ります。
「さみしかった。でも親には知られちゃいけない。何事もないように過ごした。一人でもいいと思った。友達は、その地区以外の人たちだけで十分だった」
この体験から学んだのは「考えること」だったそうです。
やり返すのではなく、自分で止める。そこから生まれた姿勢は、後に出会った坂本龍馬の言葉とも重なります。
「世の人は、我を何とも言わば言え。我が為すことは、我のみぞ知る」
幼い頃の経験と、この言葉がHAJIMEさんの軸をつくっていきました。
中学・高校・大学──選択に影響した仲間外れ
仲間外れの経験は、その後の進路選択にも影響を及ぼしていました。
中学では、あえて人気のなかったバスケ部を選んだのです。人間関係のしがらみを避けたい思いがあったからでした。
高校選びも同じ。表向きは「通いやすい学校を選んだ」と笑い話にしていましたが、内心では「仲間外れをする地区から距離を置きたい」という強い気持ちがありました。
大学ではさらにその思いが強まり、実家のある茨城から遠く離れた北海道を選びました。環境を一新し、簡単に行き来できない距離を置くことが必要だと感じたのです。
しかし授業を受けるうちに、目指していた夢の未来像が見えなくなり、夢そのものを失ってしまいました。
退学届の「嘘」から生まれた人生哲学
退学を決意し、事務室に行ったときのこと。用紙には「休学」と「退学」が並んでいました。
HAJIMEさんは最初「休学」に丸をつけ、親に送り、記入して返送してもらいました。
しかし戻ってきた用紙を見て、「退学」に丸をつけ直して提出したのです。
「その瞬間、親を裏切り、悲しませた。嘘をついた自分への後悔が深く残った」
この体験は人生を大きく変えるきっかけとなりました。
──考えて行動する。
──考えたことは公表する。
──嘘をつけない状態にする。
この三つの柱は、退学届の体験から生まれた人生哲学だといいます。
母の死と、刻まれた言葉
22歳のとき、母を亡くしました。大きな後悔とともに、母の言葉が深く心に刻まれています。
「今日という日は二度とこない」──日々を大切に生きること。
「すべての道は我が家に通ずる」──迷っても諦めず、笑いながら進めば必ず帰る場所があること。
母は実際に、迷いながらも笑って前に進む人でした。行き止まりに見える道でも「別の道に続いている」と信じて歩いていた。その姿を見て育ったからこそ、この言葉は単なる言葉ではなく「生き様」として残ったのです。
母親の姿に自分を重ねる読者も多いでしょう。迷っても、笑って前に進む。その背中は、今もHAJIMEさんを支えています。
息子と育児の時間
息子が一歳のとき、HAJIMEさんはシングルになりました。
「俺しかいない」という覚悟で日々を過ごしたと振り返ります。
夜、何度も夜間救急に走り、寝付けない夜には夜中のドライブ。晩酌をやめたのも、いつでも車を出せるようにするためでした。
「夜泣きで眠れないまま仕事に行く朝もあった。不安で押し潰されそうになった夜もあった。それでも、息子の笑顔を見られるなら全部報われた」
その言葉には、母親でも父親でも共感できる親の気持ちが詰まっています。
この期間が、HAJIMEさんの生き方を根底から変えました。自分のためではなく、息子のために生きる──それが人生そのものになったのです。
経営者としての孤独と責任
やがてオーナーから推薦を受け、課長から一気に社長に。
「俺が社長になれば、従業員を守れる。そして利用者を守れる」──そう思ったと語ります。
しかし経営者は孤独でした。応援ばかりではなく、嫌がらせや反発もあったのです。
重圧に押し潰されそうになりながらも、考え、行動し、責任を背負い続けました。
この経験があったからこそ、今の個人事業でのコンサルにつながっています。
経営者としての孤独や責任を身をもって知っているからこそ、現場で悩む管理者や経営者に寄り添える。机上の空論ではない、実感を伴ったコンサルティングができるのです。
経験を言葉にするということ
個人事業を始めて約3年半。
お客様の数には波があるものの、振り返る余裕が生まれ、AIの活用も始めました。
それによって自己分析に拍車がかかっています。
これまでの道を振り返ると、仲間外れの経験、退学届の嘘、母の死、息子と育児、経営者としての孤独──すべてが一本の道としてつながっているのを実感します。
そして気づいたのは、経験を「言葉」にすることの大切さです。
言葉にすることで自分を整理でき、誰かの支えになることもある。
そのとき、不思議なことが起きると語ります。
降りてくる思考とは何か
「いざ書こうとすると、考える前に言葉が浮かんでくる」
HAJIMEさんはこれを「降りてくる思考」と呼んでいます。
文章構成を練るのではなく、すでに形になっているものを指がなぞっている感覚だと表現します。
頭の中では常に複数の思考が巡り、その一部を文字にしようとしたときに“降りてくる”。
指はただのツールで、頭にあるものを映し出す役割を担っているのだそうです。
人生とは
インタビューの最後に「人生とは?」と尋ねました。
HAJIMEさんの答えはシンプルで力強いものでした。
「考えて行動すること。行動するなら考える。行動しながらも考える」
考えると行動はワンセットで切っても切り離せない。
考えて行動して積み上げてきた時間と、これから積み上げていく時間。それが俺の人生そのものだ──そう言い切りました。
あなたへ
インタビューの終わりに、HAJIMEさんにこう問いかけました。
「あなたにとっての『人生哲学』は何ですか?」
迷うこともある、後悔することもある。
けれど、そのすべてが俺の人生を形づくる。
母が笑いながら歩んだように、道に迷っても前に進めば必ず帰る場所がある。
だから今日という日を大切に──考えて、行動して生きていく。
そして最後に、こんな言葉を残してくれました。
「いつ死ぬかなんて先のことはわからない。だからこそ、考える脳があって、動く体があるうちは、それを使って生きていく。それもまた、人生だね。」